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出張の目的である会議の準備はいいんだけど
そのあとの宴会の準備ができてなかった・・・・
ええ、宴会芸の。
今から必死でネット検索するカンジです・・・・
三空の日にSSくらいUpしたいなぁ、と思ってるんですがこの宴会が終わらぬことには・・・
よし、頑張るよ!宴会芸!(・・・そっち?)
ところで5日はほんのり35に挑戦してすぐ無理だと悟り、あっけなく諦めたので
今日は38リベンジしてみました。
かすかに・・・ですが。
38っぽい香りも無理!という方はスルーしてください。(下に畳みます)
そして昨日・今日で拍手下さった皆様、ありがとうございました♪
暗闇の中を手さぐりで進む。
不思議なもので敵を前にした時は、弱い視力の代わりに他の感覚が研ぎ澄まされて充分にフォローしてくれるというのに、平和な時となるとそういった一切の助力が働かなくなる。
「痛っ・・・」
案の定、何かに足をぶつけ、八戒は顔をしかめて立ち止まった。
少し闇に目が慣れてから動いた方が無難だ。
たとえ心もとない視力でも、多少は違うだろう。
「どこへ行く。」
ねっとりとした質感の闇の中から低い声をかけられて、一瞬びくりと背筋をふるわせたが、すぐにここには三蔵もいたのだと思いだし、八戒はこっそり息を整えて声のした方へと顔を向けた。
「喉が渇いたので水を取りに・・・。」
言いながら、八戒は今度は少し違う意味で驚いた。
相変わらず闇は濃く、そのほかのものはぼんやりとした輪郭すら分からないというのに、白い法衣と金色の髪だけはなぜか妙にくっきりと際立って見えたからだ。黒々とした背景の中で対照的なその色合いが引き立つのは分かるが、光源の一切ない状況でどうしてあんなに鮮明に見えるのだろう。
「水ならここにある。」
三蔵はそう言って何かを指し示したようだったが、生憎とそれは見えず、ただ腰のあたりに落とした法衣の布地がごく柔らかく動くのだけが分かった。
視界の中にただひとつ見さだめられるその微かな光を目指し、八戒はゆっくりと足を踏み出す。
まるで迷う衆生が神に導かれるかのように。
きっと、この場面だけを切り取って後世に伝えたら、有り難い逸話として長く仏典に記録されることだろう。
本来の横暴さや破戒ぶりや厄介な性格や、そんなものをそぎ落としたら、目の前のこの男は間違いなく畏怖の対象となる存在だ。
「チッ。」
だが、俺様な生臭坊主は自分の身にまとった‘神聖さ’など意にも介さず、わずかな距離を中々縮められない八戒にいら立った様子で舌打ちし、その場に立ちあがった。
そしてずいっと実に面倒くさそうに八戒へ向けて腕を伸ばす。
「・・・・ありがとうございます。」
手なんか差し伸べてくれなくても結構です───いつもならそう言って笑うはずなのに。
なぜか八戒は素直にその手をとった。
闇のせいだ。
闇が濃い分、三蔵の色は引き立ち、神性が増し、視力の弱い八戒を幻惑するのだ。
そう、闇のせいだ。
手が重なるとすぐ、無遠慮に引っ張られて八戒はたたらを踏むように三蔵の方へと引き寄せられ、とん、とその肩へ受け止められた。
一瞬だけ、そのまま八戒が三蔵の肩口に自分のからだを預けて動きを止めたのも。
一瞬だけ、そのまま三蔵が握った手首を離して八戒の背に回した手で抱きしめたのも。
闇のせいだ。
「ほら、水だ。」
厚く垂れこめていた雲が流れてその切れ目から月の光があふれだす。
暗かった窓に蒼く淡い明かりが灯って、濃い闇がうっすらと和らぐと同時に、三蔵は無造作に水差しを八戒につきつけて離れて行った。
それを受け取った八戒もそっとほほえみを浮かべて三蔵から少し離れた処へ腰をおとし、水差しを傾けた。
少しだけ明るくなった周囲は再び完全な静寂に包まれ、三蔵の姿も他の雑多なものどもに紛れてゆく。
そう、やっぱり闇のせいだったのだ。
八戒はもう一度微笑して、薄闇を映す水を喉へと流し込んだ。
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